HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト   »  小説 バイス  »  そして私は妖怪になった

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

そして私は妖怪になった

タイトル: 『そして私は妖怪になった』
概要:メディスンが妖怪になる前を彼女の一人称視点で描いたショートショートです。

通勤時間中、別のメディスンのお話を考えていたらふと思いついたので、
セリフを台本形式に書いていたらこんなのが出来ました。

--------------------------------------------------------------------


いったい、いつ頃からだろう?
気が付くと私は「私」を自覚できるようになっていたの。
お目々も見えないし、お耳も聞こえない。お鼻だって利かないし身動き一つ出来なかったけれど、
確かに意識ははっきりしていたの。だから私は長い間ひたすら考えることだけを続けたわ。
それすら飽きてしまうと、今度は夢を見続けることにしたの。


ねえ、知ってる?
ある時から私、目が見えるようになったわ。
赤、青、黄色に緑。ううん、ここには数えきれないくらいもっとたくさんの色があって、目がチカチカしちゃう。
でもとっても綺麗で素敵なのね!
いつもそばにいてくれたあなたは、そんなお顔をしていたのね。私はいったいどんなお顔をしているのかな?
いつかあなたみたいに泣いたり笑ったりできるのかな?
あ、そうそう。あなたがママの大切なお皿を割っちゃって、それをこっそり猫のせいにしたの、私見ちゃったんだから。
でも黙っててあげる。私はまだお口を利けないもの。
私もっと色んな世界を見てみたいの。あなたからもっともっと色んなことを教わりたいわ。
だから夜の間、私を暗い箱の中に押し込めるのはもうやめてちょうだいね。


ねえ、聞いて!
私お耳が聴けるようになったの。
あなたの言葉だってちゃんと聞こえているんだから。
今日もあなたはいたずらをしてママに怒られたのね。
泣かないで。
嫌なことは全部私が聞いてあげる。
でもまだ抱きしめてあげることはしてあげられないから、あなたの方から私をぎゅうと抱きしめて眠ってね。


これはママが作る香ばしいコーンスープの香り。あっちから漂うのはパパが飲むコーヒーの渋い香りね。
ほら、あなたからもお花のいい香りがするわ。
私、ちゃんと嗅ぎ分けているわ!
お鼻だって利くようになったんだもの。すぐにあなたとお話しできるようになってみせるわ!
そしたらあなたに素敵な子守歌を歌って聞かせてあげるの!


あのね。今日は私、とっても悲しいことがあったの。
私知っちゃったの。私がお話しすることはあなたを怖がらせてしまうことなんだって。
だからあなたとお話することはできないみたい。
本当に残念。
せっかく言葉を覚えてあなたとお話できると思ったのにこんなのあんまりだわ。
だから私はみんなが眠りについた後、一人悲しいお歌を歌うの。
コンパロ、コンパロ。
目は見えるのにこの瞳では涙を流せない。
コンパロ、コンパロ。
あなたと私、いったいどこが違うっていうの?


気持ちのいい天気ね。
今日はあなたとお外で遊ぶの。
おままごとがいいかしら。本当はかけっこだってなわとびだって何だって出来るけど、今はじっとしていてあげるからね。
私が動いたらみんなびっくりしちゃうもんね。
大丈夫、私は辛くなんかないよ。あなたがいつまでもお友達でいてくれるだけで十分ですもの。
さぁ、少し風が冷たくなってきたからもうお家に帰りましょう?
あら? 遠くの木の影からこっちを見ているあの男の子は誰かしら?


最近あなたはすっかり私と遊んでくれなくなっちゃったのね。
どうして?
あなたの背が私と変わらなかった頃から私たちお友達だったじゃない。
それなのに、私の知らないあの男の子と一緒に遊んでばかり。
もしかして私と遊ぶのに飽きちゃたの?
嫌よ、そんなの!
私たちずっとお友達だって言ってくれたじゃない。あの時の約束、今でも私信じているんだよ?


最近のあなたは何だかとっても寂しそう。どうして一人でお部屋にこもって泣いているの?
昔みたいにもう私を抱いて眠ってはくれないの?
あぁ、彼が帰ってきたわ。また手に瓶を持って。
うぅ、ヒドイ臭いね。吐き気がするわ。
そうしてまたあなたのことを酷く虐めるのよね。
大丈夫、私はいつまでもあなたの味方だよ。


どうして?
どうしてあなたは私をぶつの?
悪いのは、あの男の方なのにどうして私の手足を引っ張ってそれから硬い地面に叩きつけるの?
やめてよ、痛いよ。
そんな恐ろしい顔じゃなくて、昔のように優しい笑顔を見せてちょうだい。
……でも、それでも私は我慢するよ。手足がキリキリ痛むけど、あなたの気がそれで済むのなら私を叩けばいいわ。
それも私の仕事ですもの。


あの男がね。またあなたを泣かすもんだから、私ちょっとだけ頭に来ちゃって背中を押してやったの。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ脅かしてみたの。
そしたら彼、階段から転がり落ちて行って、真っ赤なお花を咲かせて動かなくなったわ。
だからもう泣かなくていいのに、私ももうぶたれなくてもいいはずなのに、それなのにどうしてあなたはまだ泣いているの?


私ね。とうとう最後まで分からなかったことが一つだけあったの。
目も見えて、耳も聞こえて、匂いも嗅げて、声も出せて、手足を動かすことだってできて、
痛みを感じることだってできるのに、一度もお食事をしたことがなかったわ。
だから今夜、今まで私とお友達でいてくれたお礼に、あなたから教えてもらうことにするの。




素敵な味をありがとう。
そして私は妖怪になった。
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
更新履歴


例大祭14 お品書き (04/02)

紅楼夢12 お品書き (10/02)

紅楼夢12 (08/02)

メリーさん(オリジナル) (07/18)

例大祭13 脱稿のお知らせ (04/26)

総記事数:
カウントダウン
来てくれた人
Since 2012/06/11
応援よろしく
プロフィール

七空榮宴亭

Author:七空榮宴亭
東方を愛してやまない野郎の集まりです。

メールアドレスは
こちら

お品書き
通販委託情報
【従者の心得】 紹介ページ

【午前零時のセプテット・上】 紹介ページ

【午前零時のセプテット・下】 紹介ページ

【閉ざされた冬の幻想で】 紹介ページ

【忘れ形見の鈴蘭人形・上】

紹介ページ

【忘れ形見の鈴蘭人形・下】 紹介ページ
つぶやき
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
リンク



・参加イベント


・お世話になっている印刷所


・お世話になっている委託先

・友人のホームページ HN:Darkssさん
DTM・ボカロを中心に作曲活動中
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。