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宵闇の妖怪 ※仮

タイトルは仮。
プロローグ部分だけ電車の中で思いついたので書いてみました。
良い感じにプロットが出来れば続きも書いてみようかな。
ただ、例によって長編になることは必死。



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『能ある鷹は爪を隠す』ということわざを知らない者はまずいないだろう。そう、本当に優れた力を持つ者はそれをひけらかしたりせず、憮然とした態度を振る舞うものだという教えだ。
かく言う私も御阿礼の子として生を受けてから、一度見たものはすべて瞬時に憶えそして墓場まで持って行くことのできる優れた能力が備わっている。
先生に自慢をして「調子に乗るな」と頭突きをされてしまうあたり、まだまだ私は鷹になりきれていないのかもしれない。
ここ幻想郷の住人たちは皆「能」を持っている。己の宿命だと真摯に受け止める者、世のため人のために精を出して仕事に役立てる者、いたずらに行使する者、使い方すらよくわかっていない者、想いはみんな様々だ。
ここで個人的に興味深い例を挙げてみたい。
宵闇の妖怪として知られるルーミアのことだ。
言わずもがな一般的には人食いとされ、里における危険度も極めて高い彼女だが、見た目は私とさほど変わらない少女だ。
(※1 二、三度言葉を交わしたことはあるが、精神年齢は見た目以下かもしれない。)
とにかく、そんな彼女の生態は闇に包まれている。
(※2 我ながら上手いことが言えた。)
棲み家ははっきりしないが東の神社の宴会にはよく顔を出しているようなので、魔法の森周辺だろうか? 主食は恐らく生きた人間を捕食するのだろう。それも外の世界から紛れ込んだうっかり者が被害に遭いやすいと言われているが、その実態を確認した者はいない。
(※3 スプラッター系は苦手なのでたとえ死んでも目の当りにするのは御免被るが。)
私が気になっているのは彼女の主食ではなく、その能力の方だ。恐らく妖怪の中で彼女ほど妖怪らしい力を持つ者はいないと私は思っている。

『闇を操る程度の能力』

持つ者が持つ者なら、妖怪世界を牛耳ることすら可能とする能力だろう。それこそあのスキマ妖怪すら凌駕するほどの、だ。
だがその力を振るう本人があの少女であるというのはいささかもったいないと思うべきなのか、ホッと胸をなでおろして良いのか考える度に不思議な気分になる。人間という立場から言わせてもらうとやはり後者の方なのだろう。
ここで冒頭のことわざを今一度思い返してみたい。あのことわざには表向きの意味の他に、もう一つ裏の顔があるのだろうと私は考察する。
もしも群れの中で能があり過ぎたが故に爪を隠さざるを得なかった鷹がいたとしたら?
他の仲間と共に過ごすために隠すことを強要された、とそうは考えられないだろうか。
ルーミアの頭には可愛らしいリボンが結ばれているが、あれはただのリボンではないとのことらしい。特殊なお札のようなもので、自分では取り外すことが出来ないのだとか。
(※4 私の頭に付けてる花飾りは無論着脱可能である。)
ここから先はあくまで私の勝手な想像だが、ご興味を持って頂けたのであればもう少しお付き合い願いたい。
もしもあのリボンが強すぎる妖怪ルーミアの力を無理矢理に抑えこんでいるものだとしたら、一体誰が、何のために封じたというのだろうか……?
もしかして…………いや、やはりこれ以上はよそう。
この記録には私感を混合させるべきではない。
私も七代目の勝手な妄筆にはずいぶんと苦労させられたものだ。だから次の九代目には正しい知識だけを遺してやりたい。
せめてこの私の考えを九代目を迎えた時も憶えていてくれて、そして少しでも賛同してくれるのなら、私はもう何も言うまい。
……うう風が冷たい。最近は日が落ちるのが早くなってきた。今日は早めに湯あみをして床につくとしよう。


この時の記録は八代目、稗田阿耶の死後の翌年に、里で起きた昼夜をまたぐ大火事によって無残にも蔵ごと焼失してしまった。
そのため九代目稗田阿求の著書、『求聞史紀』においてルーミアの危険度が「中」なのは致し方ないことでもあり、彼女にとって無念だったことに他ならない。






「うー。お腹空いたなぁー」
昼間からりと晴れた太陽も高度と明度を落とし、肉眼で見ても目を痛めない程度のまばゆいオレンジで景色を包んだ夕刻の頃、すでに薄暗くなった森の中をそれよりもさらに暗い闇の衣を身に纏い、ふよふよと漂っている妖怪少女の姿があった。
まもなくゴツンと大きな音とともに、その木に留まっていた妖怪鴉が「かぁー」と一鳴きしながら飛び立っていった。
樹の幹にもろに頭を打ち付けた少女だが、慣れているのか大したリアクションも取らずにずるずると地面に落下しそして、
「ぐぅ……」
とぐうの音を腹から出すのであった。
まともな食事はもう三日以上ろくに取っていない。知り合いの妖怪が構える焼き鰻の残りを一切れもらったのが最後だった。
いくら人間よりタフな妖怪ではあるにしろ限界ってもんはある。栄養のあるバランスのとれた食事なんて所望しないから肉が欲しい。
動いている肉ならここから少し行ったところにいっぱいあるにはあった。だがそこは自警団の目が厳しく、むやみに侵入すれば手痛い仕置が待っていることを、この少女ルーミアは痛いほど知っていた。
別に争いごとを起こそうなどという気はない。ただ少しだけかじらせて欲しいだけなのに、里の人間は中々にケチな人ばかりなのである。
「むー。お腹すいたのだぁ……」
もはやそれしか言葉に出ない。
断食も二日目を超えたあたりから通算で三百回は口にしただろうか。余りに腹が空き過ぎて、「空腹」という単語ですら頭の中でゲシュタルト崩壊しそうな、そんな勢いである。
「お姉ちゃん。どうしたの? こんなところで倒れてて大丈夫!?」
「……?」
ふいに頭の上から子供の声が聞こえた。ルーミアは聞き覚えのないその声に半分閉じかけた目で見上げた。
背中に大きなカゴを背負い、切った木を薪にして持ち帰るところだったのだろうか、里の子供らしき少年が、木の幹に寄りかかって寝転んでいたルーミアを見下ろすと、何かに気付いたように口を開いた。
「あっ。その頭、髪飾りが樹の枝に引っかかっちゃったんだね」
「んー?」
はて、自分が今倒れているのは果たしてそんな理由からだったであろうか。
少年の視線を追うように顔をあげようとしたが、なるほど、先ほど頭を打ち付けた拍子に樹の枝がリボンに引っかかってしまったようだ。
もはやそれすら気がつけないほど腹が減っていたルーミアにとってはそんなことは二の次なのだが、まさか空腹で倒れていたとは知らない少年ならそう勘違いするのも無理はないだろう。
「ちょっと待っててね。今ほどいてあげる」
よっと、ずっしりとしたカゴを肩から外し、地面に下ろすとルーミアの頭に手を伸ばした。
この少年は残念ながら裕福な家庭で育ったのではないのだろう。着ていた服など身なりからそう察せたのではない。里の人間で、この妖怪に対して何の警戒心もなく近づけるということがそもそもの証なのだ。それほどまでに乏しい妖怪知識しか持ち合わせていないということは、当然寺子屋にも通えてないのであろう。そこの教師である上白沢慧音であれば、たとえ家が貧しくとも無償で通うことを許しただろうが、少年の家庭にとっては学より労力を優先したのだろう。
こんな森まで小さな子供が薪を取りに来ているのだ。もはやそれ以外に理由は見つからない。
だから少年は妖怪ルーミアに出会った時の対処法をまったくといっていいほど心得ていなかった。慧音を始め、大人たちが口を酸っぱくして言っていたであろう、禁忌すらも。
「あっ……」
「はいっ、絡まってた髪飾り取れたよ」
前歯が欠けた顔でにこりと笑いかける少年。
対して枷が外れた少女もにこりと少年に微笑み返した。

「ありがとう。お礼に丸呑みにしてアゲルわ」
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