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【イベント】第八回紅楼夢向け新作サンプル

プロットも出来上がり、誠意執筆中です。
本編冒頭のプロローグ場面の一部サンプルとなります。

※完成時の内容と大幅に変更点がある場合がございます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

異常な夜だった。
辺り一面恐ろしいほどに鬱蒼と生い茂る針葉樹。
普段ならこのあたりの林からは、絶えず野生動物や虫の鳴き声が聞こえてくるのだが、今はただ一つの音によって全てがかき消されていた。
バラバラと激しく葉を揺らす大粒の滴は、今宵も勢いを抑えることなく降り注ぐ。
秋も終盤を迎えた今の時期、ヨーロッパ北部に位置するこの地域では、温帯低気圧の影響で時よりこうした激しい雨が降る。
連日の豪雨によってここら一帯の地面は地形が崩れるほどにぬかるんでおり、ところどころ泥沼と化していた。
だが異常なのはこの天気に対してではない。

「はぁ、はぁ、はぁ、……っはぁ、はぁ……」

道なき沼地を息を切らして走る幼き少女の姿。歳は十と少しといったところだろうか。彼女以外に人の姿は見られない。
普通に考えれば真夜中の、しかもこんなに天気の荒れた林の中で少女の荒い息づかいが聞こえたとなれば、
聞く人によってはグリム童話以上にホラーなシチュエーションともいえよう。
天より降り注ぐ大粒の雨は木々の幹や葉にぶつかると弾けるように向きを変え、地面へと流れていく。それはまさに天然のシャワーであった。
その中を傘もささずに泥だらけになりながら一心不乱に少女は走っていた。
悪漢に追われているというわけではなかった。
むしろ相手が話の通じる相手ならば、それがどれだけ凶悪指名手配犯であれ、巷で有名な切り裂き魔であれ、今すぐにでも姿を現してほしいとすら願った。
このような場所でいったい何をしていたのか。それは彼女自身にも分からない。
気が付いたら真っ暗闇の中に一人取り残されていた。ただそれだけだった。
濡れる肌の感触の悪さにハッと我に返るまで、彼女は一人この暗闇の中でぽつぽつと、生気の抜けた人形のように歩いていたのだった。
ここがどこかも、自分がどこからやってきたのかも覚えていない。少なくとも今までこのような場所を訪れたことはない。
小さな自分を置いて親はどこにいってしまったのか、そもそも親が一緒にいたのか、そのあたりに関する記憶がぽっかりと抜け落ちているようだった。
それでも自分の名前は覚えていたし、頭が痛むわけでもないからどこか打ったわけでも夢遊病でも、完全に記憶喪失に陥ってしまったわけでもないのだろう。
だがそんな難しいことを落ち着いて考えている余裕があるはずもなく、突如理不尽な環境に身を置かされ、彼女の内心は恐怖と不安二つの感情が渦巻き、じっとしてなどいられなかった。
早くここから抜け出したい、そう強く願いながら彼女が最初に取った行動は叫ぶことであった。
「だれかーっ! だれか、いませんかぁー!」
だが少女のか細い声は降りしきる雨音の喧騒の前ではほとんど意味をなさなかった。
おまけにもう何日も食事を取っていなかったのだろう。自信を持って言えないのは最後にナイフを手にしたのがいつか思い出せないためだ。
そんな状態で出せる声などたかが知れていた。
ギュウとわき腹のあたりをつねり痛みでごまかす。
身につけている服の生地の肌触りから察するに、裕福な家庭の子供ではないのかもしれない。
こんなことを思っては申し訳ないが、娘に着させるにはもう少し気を遣った方がいいだろう。リボン一つ施されておらず、まるでボロ切れを纏っただけのような地味なワンピースだった。
二、三度叫んでみたもののまったく効果が期待できないのを悟ってか、諦めてまっすぐ歩きだすことにした。
長い間いたおかげか目はすっかり夜闇に慣れていた。そうでなくては足元すらおぼつかない。
――いや、そうではない。
それだけにしては明るすぎた。灯の気がないのになぜ服のデザインまで知ることができたのか。
ふと空を見上げた。
雨粒が容赦なく少女の顔を叩いたが、ペッタリと張り付いたその前髪をぐいと横に分け、反対の手で顔をごしごしとこすった後、しっかりとその姿をとらえた。
木々の間から見えたのは煌々と輝く満月。少し赤味を帯びた無気味な色合いはますます彼女の心を不安にさせた。
しかしその輝きはとても妖美的で、見ているだけで吸い込まれそうで、心を鷲掴みにされたような気分になれた。
いつしか彼女は瞬きをも忘れて、魅入られたように空に浮かぶ月を眺め続けていた。
不思議なことに少女の心には
「どうしてこんなことになったのだろう」だとか、
「なんで私がこんな目に逢っているのだろう」といった感情は湧いてこなかった。
あたかもここに存在することが己の運命であるかのように。
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